現在、日本において65歳以上の高齢者のうち、認知症の人の割合は約12%、
軽度認知障害の人の割合は約16%と推計されており、
認知機能に何らかの症状が認められています。
認知症の影響は高齢化社会において深刻であり、本人やご家族だけでなく、
介護や医療の面からも社会全体の負担を増大させます。
全認知症の60~70%を占めるアルツハイマー型認知症では、
双⽣児研究などから遺伝的要因の寄与が⽐較的⼤きいと推定されています。
ただし、発症には年齢、⽣活習慣、環境、併存疾患など複数の要因が関わります。
そのためゲノム解析により多様な遺伝子が認知症発症にどのように、
あるいはどの程度関与しているか明らかにすることは、
認知症領域におけるオーダーメイド医療を推進するうえで極めて重要です。
当チームでは大規模なゲノム解析技術で得られた、
膨大なゲノム情報を解析することで認知症発症に関与する新規のメカニズム、
あるいは保護的なメカニズムの探索やリスク評価の精緻化を目指しており、
高リスク者の早期診断と効果的な予防介入につながる研究を行っています。
我々は、健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD)に参加したり、 国立長寿医療研究センターのバイオバンクを利用させていただき、大規模なゲノム解析を行っております。 さらに、上記のゲノム解析で同定された遺伝的バリアントの機能について 詳細に解析するために、ヒトiPS細胞を使った研究も行っています。 ゲノム編集技術を用いて、その単一の遺伝的バリアントが認知症の病態にどのように影響を与えるのか細胞レベルで検証しています。 また、認知症患者からiPSを作出しマルチオミクスを含めた多角的な解析により、認知症の多様な遺伝要因の解明を目指しています。
当研究室ではこれまでのゲノムの研究で培った経験や技術を認知症領域にも応用し、 今後オーダーメイド医療の基盤を作る研究を行ってまいります。 またゲノムに限らず、iPS細胞等のサンプルを用いて遺伝的バリアントの機能評価など といった多角的な解析を実施することで、 認知症発症メカニズムの解明と創薬に貢献できるよう、研究を続けてまいります。