[開催レポート]
理研よこはまサイエンスカフェ「腸内細菌とプロバイオティクス」

日時
2012年4月22日(日)14:00~16:00
講師
大野 博司(免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫系構築研究チーム チームリーダー)
会場
県立川崎図書館

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理研よこはまサイエンスカフェ2012」最後となるこのプログラムでは、腸の免疫システムについて日々研究している大野博司チームリーダーが、腸内細菌とプロバイオティクスという切り口で話題を提供。体内最大の免疫組織といわれる腸の免疫のしくみと、この分野の最新の研究状況ついてお話しました。
事前申込では170名を超える申込があり、抽選で選ばれた約50名の方が参加。図書館2Fの会議室に入る限りの机と椅子を並べての開催となりました。

腸は体内最大の免疫組織

腸粘膜について語る大野先生

腸内には多種多様な菌が生息していて「腸内フローラ」と呼ばれる複雑な生物生態系をつくっています。冒頭では、腸粘膜は栄養吸収のため広い面積がある一方で、食べ物と共に入ってくる外来菌に耐えずさらされ、実は大半の菌の侵入経路であることが紹介されました。細菌・ウイルス感染から腸粘膜を守る物質を作ることができない場合、腸内細菌は10〜100倍に増えてしまうなど、腸内の免疫のしくみが腸内細菌と密接に関わっています。
また腸内細菌の培養は難しく、90%以上は培養できていないのではないかといわれています。そのためこれまで研究があまり進んでこなかった分野であったことも言及されました。

腸内フローラ解析とプロバイティクスの役割

かつては一種類ずつ菌を培養してゲノム解析をしていましたが、現在では最近の集団をまとめて配列決定し、コンピュータを用いて各菌のゲノムを再構築することできるようになってきています。
現在、アメリカ、ヨーロッパ8カ国の研究機関で人の全フローラ解読が進められていて、近い将来、「腸内細菌の大辞典」が完成できることも紹介されました。こうした解析により、腸内細菌と免疫システムの関連をより詳細に研究しやすくなり、今後の腸内免疫に関する研究に大きく貢献することが期待されています。
後半では、代表的なプロバイオティクスの一つであるビフィズス菌の役割について紹介。大野先生の研究成果では、ある種のビフィズス菌がO157の感染を防ぐ効果があることがマウス実験で明らかになっています。予防株と呼ばれるビフィズス菌は、代謝物としてより多くの酢酸を作り出し、腸内を保護するため、O157への抵抗性を強めることがわかっていて、将来は健康増進や予防医学への貢献が期待されています。

参加者からのコメント

サプリメントの摂取について質問する参加者

終盤の質問タイムでは、「大腸がんと腸内細菌の関係性はどの位あるのか」「内視鏡検査のあと、どの位で腸内細菌は回復するの?」「ビタミンなどサプリメントを飲むことは大腸にもよいの?」など、腸の病気、健康維持について多くの質問が寄せられました。
すべてにはお答えできませんでしたが、積極的に質問してくださった方どうもありがとうございました。

当日の様子


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