広域電顕撮像
光学顕微鏡の発展に伴い、組織・細胞・オルガネラ・分子の動態や局在を容易に推定できるようになりました。しかしながら、各組織・細胞にどのような形態のオルガネラが存在し、どのような状態で分布しているか超微形態レベルでの実体を把握するには、電子顕微鏡による観察が必要です。我々は、組織や細胞などの透過電顕(TEM)像を広域に渡って自動撮影するシステムと,撮影したTEM像をつなぎ合わせ1枚の高解像度TEM写真を取得するプログラムを組み合わせた「広域TEM像自動取得システム」を開発しました。本システムを用いて、植物組織や培養細胞などの数万枚のTEM像を自動撮影し、結合させることで、ギガピクセルクラスの写真の取得に成功しています。さらに、 スライドガラス 等に載せた大きな樹脂包埋切片を用いて、FE-SEMによる切片SEM観察法により、広域電顕像の取得を進めています。
近年、走査電顕(SEM)の電子銃や検出器などの技術革新により、 スライドガラスやシリコンウェハなどの上に載せた樹脂切片を、反射電子検出器を用いて撮像することで、透過電顕法(TEM)と遜色ない切片の電顕像を撮影できるようにな離ました。この切片をSEMで反射電子検出する観察法、略して“切片SEM法” により、TEMよりも厚い樹脂切片を用いて、広域の電顕像を容易に得ることができます。初めにTEM試料と同様に固定・脱水・樹脂包埋した試料から, ウルトラミクロトームと光顕用ダイヤモンドナイフを使って厚さ100nm~2 µmの準超薄切片を作製し、スライドガラスやカバーガラスに載せます。その後、電子染色と導電コーティングを行い、FE-SEMのBSE検出器で撮像します。SEM観察前に色素染色して光顕で観察することも可能です。さらに連続切片を載せたスライドガラスやシリコンウェハの同一箇所を撮影し、立体再構築することもできます(アレイトモグラフィー法)。