[開催レポート]
理研よこはまサイエンスカフェ「小さな万能マシーン『細胞』を自在に操る」

日時
2016年1月30日(土)14:00~16:00
講師
鈴木 貴紘(ライフサイエンス技術基盤研究センター 機能性ゲノム解析部門 オミックス応用技術研究グループ 細胞機能変換技術研究チーム 研究員)
会場
横須賀市生涯学習センター

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2016年1月30日(土)、理研よこはまサイエンスカフェ「小さな万能マシーン『細胞』を自在に操る」を、横須賀市生涯学習センターで開催しました。

今回の講演者は横浜市出身、防衛大学校生として青春時代を横須賀で過ごし、現在は理研の研究者である、鈴木貴紘研究員です。
冒頭で「2人に1人がガンにかかる、そのうち2人に1人はガンで死亡する。」というショッキングなデータが示されました。「10年後、20年後の患者様を救うことを目標に、日々研究に邁進しています。今日は、最先端の研究現場で何が行われているかを分かりやすく説明したいと思います。」との言葉で、カフェがスタートしました。

最初に、細胞ができる仕組みについて説明がありました。数十兆個あると言われる人の身体の細胞※1は、体の臓器毎にいろいろな働きをしていますが、その違いはなんなのでしょうか? 1つの細胞の核には遺伝子を記録するノートであるDNAと呼ばれる化学物質があります。ゲノムとはDNAに書き込まれている情報※2のことで、一つの個体を構成する全ての細胞は同じゲノムを持っています。 DNAには、とびとびに遺伝子が書き込まれており、それぞれの遺伝子からタンパク質がつくられるので、遺伝子とはタンパク質の設計図とも言えます。細胞によってゲノム中の使われる遺伝子、つくられるタンパク質がちがい、それが細胞の違いとなっているのです。
(※1: 60兆個とも37兆個ともいわれているが、実はよく分かっていない。)
(※2: 人のゲノムの情報量は32億文字分。)

続いて、鈴木研究員の研究テーマである、「遺伝子を操作することで細胞を自在に操る」という研究の話になりました。ある細胞で使われている遺伝子セットを他の細胞に入れ、別の細胞をつくる、という研究です。 すでに臨床段階にあるiPS細胞はこの手法の一つといえ、4つの遺伝子を皮膚の細胞にいれると万能細胞ができ、その万能細胞を欲しい種類の細胞に分化させます。鈴木研究員の研究は、万能細胞化を経ず、皮膚の細胞から直接心臓の細胞、肝臓の細胞などをつくる事ができるのでは、という仮説からスタートしており、すでにいくつかの成功例がでています。 その他、細胞を操る研究の例として「ゲノム編集」が挙げられました。直接ゲノムを書き換える事で細胞を変えてしまうという、遺伝子組換技術の一つで、光るネズミや、成長遺伝子を操作されたマイクロぶたなどの製造例があります。また、ガンの治療方法として、免疫細胞を強化(改変)する研究などを紹介されました。

最後に、遺伝子操作が可能になるほど、倫理上の問題も指摘されますが「研究の倫理とは国やその国の歴史、宗教、民族などにより解釈が異なります。科学技術は良い使い方もできれば悪い使い方もできる諸刃の剣。研究者は常に高い志、モラルを持って研究していかなくてはならない。」と話されました。

参加者からのコメント

質疑では、iPS細胞はなぜ皮膚の細胞をつかうのか、遺伝子の異常による病気は将来的にはゲノム編集などの技術により治せるようになるのか、などの質問がありました。 「iPS細胞で脳はつくれますか?」という質問については、細胞をつくる事と、臓器をつくる事の違い、臓器の一部をつくる事にはある程度の成功がみえているが、臨床にはほど遠い現状であることを、発表されている研究例などを交えて説明されました。

講演分野に詳しい方のご参加も多く、多岐にわたって意見、質問がありました。また、講演終了後には、理系進学を目指す高校生との語らいもあり、科学、研究者をより身近に感じられる会となったのではないでしょうか?

ご参加頂いた皆様、どうもありがとうございました。

下はオレンジジュースからDNAを取り出す実験の様子。

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