[開催レポート]
理研よこはまサイエンスカフェ「ナノの世界を見る〜タンパク質のかたちとはたらき〜」

日時
2015年12月12日(土)14:00~16:00
講師
関根俊一(ライフサイエンス技術基盤研究センター 構造・合成生物部門構造生物学グループ 超分子構造解析研究チーム チームリーダー)
会場
神奈川科学技術アカデミー

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2015年12月12日(土)、理研よこはまサイエンスカフェ「ナノの世界を見る〜タンパク質のかたちとはたらき〜」を、神奈川科学技術アカデミーで開催しました。
今回はナノの世界を見るというテーマのもと、ヒトのからだを構成する細胞で一番多い構成成分であるタンパク質に焦点をあて「タンパク質とはなにか?」、「どうやってタンパク質のかたちを調べるのか」、そして「かたちがわかると何が分かるのか?」という3部構成で解説がありました。

タンパク質はすべての生物がもっている、生命現象を担う基本的な物質で、ヒトには2万5千ほどの種類があります。大きさは数〜数十ナノメートル(1ナノメートルは1,000,000分の1ミリメートル)と顕微鏡でも見えないほどの小ささですが、さまざまなかたちがあり、そのかたちによって違う役割を果たしています。何かを結合させたり、切断したり、伝達する役割がそれぞれにあり、例えば、ホタルのお尻が光る理由もタンパク質が発光していることによるものです。タンパク質はアミノ酸という単位が一直線に数珠つなぎにつながった構造をもっている分子で、アミノ酸は20種類あります。

ヒトでは9種類が必須アミノ酸で、ヒトにはつくることができないため、食べ物から摂取する必要があります。アミノ酸の並び方でタンパク質のかたちが自動的に決まり、かたちの違いが機能の違いとなります。タンパク質のかたちを調べる方法は、NMR、X線結晶解析、電子顕微鏡解析と主に3種類あり、それぞれに特徴があるため最適な方法を選び解析をします。解析したかたちは、タンパク質の働くしくみの謎を教えてくれるだけでなく、さまざまな用途に役立ちます。そのような例としては、抗インフルエンザ薬の開発があります。インフルエンザはインフルエンザウイルスがのどや気管支、肺で感染・増殖することによって発症します。ウイルスは物質と生き物の中間で、タンパク質やDNA、RNAを持っています。抗インフルエンザ薬はウイルスのタンパク質のかたちをもとに設計された薬であり、かたちが分かることによって非常に上手く薬の開発を導くことができた成功例です。

また、今回は講師による解説に加え、実際にタンパク質の分子模型をつくりながらナノの世界へ理解を深めるという新しい試みもありました。講師がつくった模型の見本を参考に、参加者同士が協力しながら1つのかたちに仕上げました。「難しいけれど、楽しかった」との声が多数あがり、講義ではなくカフェというカジュアルなスタイルがより反映された回となりました。

参加者からのコメント

質疑は、休憩時間に参加者が付箋に質問を書いてボードに貼る形式をとり、今回もたくさんの質問が並びました。時間の制限があるなかでの回答になりましたが、その中で「遺伝子が部品の設計図だとすると2組の染色体のうちどちらを使うか決まっているのか?また、遺伝子は2重らせんのどちらにあるのか決まっているのか?」という質問への回答をご紹介します。「ヒトは染色体を46本もっていますが、父方からきたのと母方からきたので2組23対あり、どちらを使うのかは普通の遺伝子は区別をせずに使っています。2重らせんのどちらにあるか決まっているのか、という質問ですが、DNAは2本の鎖からできていますが、2本のうちどちらが設計図になるかは、遺伝子の種類によって決まっています。」との、回答がありました。その他にも「ゆで卵から生卵に戻すことができたという記事を読んだが、本当にそういったことができるのか?」、「ヘモグロビンとミオグロビンの違いについて」など多様な質問があり、幅広い層の方が楽しめるサイエンスカフェとなりました。
解説を聞き、実際に模型をつくるというプロセスを踏むことによって、目には見えないナノの世界を身近に感じていただける機会となったのではないでしょうか。
ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。


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