RIKEN Yokohama 20th History 横浜キャンパス20年間の歩み

History

沿革

Achievement

成果

1999

Oct.1999.10.8

大容量DNAシーケンサーRISAの完成

高速大容量シーケンサーRISA(RIKEN IntegratedSequence Analyzer)が完成。従来の高速大容量シーケンサーに比べ4倍の処理能力をもち、1台8時間の稼動で約60万塩基対の解析が可能となった。

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2000

May2000.05.08

世界に先駆けてヒト21番染色体の全解読に成功

理研GSC中心とする国際チームは、国際ヒトゲノム計画の一環として、21番染色体の解読を終えた。GSCは約3400万塩基のうち50%を担当。98の新規遺伝子を発見したほか、動原体近傍と染色体末端に特色のある繰り返し構造を世界で初めて明らかにした。掲載雑誌:「Nature」(2000年5月18日)

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2001

Feb.2001.02.08

マウスcDNA アノテーション情報の公開

世界に先駆けマウス完全長cDNA(約21,000クローン)の解析を進め、世界標準となる機能アノテーション(機能注釈)情報を付与したマウスの完全長cDNA情報を公開した。約12,400種のマウス新規遺伝子を発見し、遺伝子の転写調節やがんの増殖や抑制に関する遺伝子を見出した。掲載雑誌:「Nature」(2001年2月8日)

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2002

Mar.2002.03.22

シロイヌナズナ完全長cDNA 約1万4600種を同定

「シロイヌナズナ遺伝子エンサイクロペディア(百科事典)」として、世界に先がけてシロイヌナズナ完全長cDNA 約1万4600個の解析を行い、約2400種の新規の遺伝子を確認し、1万4000種におよぶ遺伝子の制御領域情報を明らかにした。掲載雑誌:「Science」(2002年4月5日)

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Sep.2002.09.20

細胞外からの情報を伝達する新しいメカニズムを解明

EGF(上皮細胞成長因子)が結合したEGF受容体細胞外領域の結晶構造を決定することに成功。
細胞外から細胞内への情報伝達機構を解明する上で重要な知見を与えるだけでなく、EGF受容体ファミリーのかかわる悪性腫瘍などの新たな治療法の開発につながるものと期待される。
物質が転写部分で作用する機構を明らかにし、効果の高い新薬の開発も可能になると期待される。掲載雑誌:「Cell」(2002年9月20日)

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2003

Apr.2003.04.16

DNAブックの試作版発表

cDNAを特殊な手法で印刷した「DNAブック」が完成。約6万個の遺伝子クローンを書籍として容易に頒布することができ、世界中の研究者に利用された。掲載雑誌:「Genome Research」(2003年6月号)

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Jun.2003.06.30

関節リウマチ(RA)へのかかりやすさに関わる遺伝子を同定

RAとRAでない被験者の遺伝子の違いを調べ、PADI4の遺伝子に違いがあることを突き止めた。
RAにかかりやすいPADI4遺伝子はRAにかかりにくい PADI4遺伝子に比べて、体内でのシトルリン化反応を起こしやすい傾向が認められた。RAの発病者の血液中にはシトルリン化されたタンパク質に対する自己抗体ができることが最近注目されているが、この原因は分かっておらず、研究チームの発見は、この原因を説明するものと期待される。さらに、RA・自己免疫疾患研究の新しい分野の開発へと大きく発展させることを目指す。掲載雑誌:「Nature Genetics」(2003年8月号)

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2005

Jan.2005.01.10

変形性関節症の原因遺伝子を世界で初めて発見

日本だけでも約700万人の患者おり、これまで謎であった変形性関節症の原因遺伝子のひとつが、アスポリン遺伝子であることを同定した。変形性関節症の原因、病態を遺伝子レベルで解明した世界で初となる研究成果で、今後アスポリンとTGF-βの関係を詳細に解析することによって、関節軟骨を維持するメカニズを明らかにするとともに、変形性関節症の画期的な治療、治療薬の開発につながるものと期待される。掲載雑誌:「Nature Genetics」(2005年2月号)

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Aug.2005.08.15

木質形成に直接関与するマスター遺伝子を発見

地球上のバイオマスの大部分は樹木の木質細胞に由来する。この木質の形成に必要な遺伝子群を制御するマスター遺伝子を発見した。バイオマス生産性が高く品質の優れたスーパー樹木の開発が期待される。掲載雑誌:「GENES & DEVELOPMENT」(2005年8月15 日)

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Sep.2005.09.02

哺乳動物の大規模RNA解析による「RNA新大陸の発見」

タンパク質の合成に使われないRNA(ncRNA)が大量に存在することを発見。さらにそれらが、遺伝子発現の制御をはじめとするさまざまな機能をもつことを示唆し、これまでの定説をくつがえす大発見となった。掲載雑誌:「Science」(2005年9月2日)

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2006

Aug.2006.08.24

遺伝子の新しい文字「人工塩基対」の開発に成功

「Ds」と「Pa」とよばれる2種類の人工塩基を開発した。
Ds-Pa塩基対は、PCRにより試験管内で高精度に複製することができ、さらにRNAポリメラーゼを用いてRNAに転写させることも可能なため、医療や食品分野で有用な人工の核酸、アミノ酸、タンパク質の合成につながるとして期待される。掲載雑誌:「Nature Methods」(2006年8月23日)

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2007

Feb.2007.02.19

新規遺伝子診断技術「SmartAmp法」を開発

一滴の血液からわずか30分でSNPを検出する超高速等温DNA増幅法「SmartAmp法」の開発に成功。薬効や副作用の診断が可能な技術として、国内外で臨床研究も開始された。掲載雑誌:「Nature Methods」(2007年2月18日)

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May2007.05.19

細胞外から細胞内へ分子を取り込む細胞膜陥入機構を解明

X線結晶構造解析等の様々な手法を駆使し、未解明の部分が多かったエンドサイトーシスにおける生体膜陥入機構の一端を明らかにした。
エンドサイトーシスと関連するがんや糖尿病、筋疾患、神経疾患、免疫性疾患、病原体の細胞内への侵入などの疾患解明に重要な知見となることが期待される。掲載雑誌:「Cell」(2007年5月18日)

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2008

Aug.2008.08.11

植物の枝分かれを制御する新しいホルモンを発見

植物の根の周りで働く微生物などとのコミュニケーション物質として知られていた「ストリゴラクトン」が、植物体内では「枝分かれ抑制ホルモン」として機能することを世界で初めて明らかにした。今後、作物の収穫などに直接影響をおよぼす植物の枝分かれの制御技術と生長を横取りする寄生植物の防除法の開発につながることが期待される。掲載雑誌:「Nature」(2008年8月10日)

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2010

Jun.2010.06

新型インフルエンザウイルスの迅速検出キットの開発

迅速核酸検出法「SmartAmp」による新型インフルエンザ(2009 pandemic A/H1N1、2009年3月にメキシコで発生)検出キットを開発した。その後2010年末に、千葉県立東金病院、いすみ医療センター等における臨床研究データに基づき、SmartAmp法を用いた新型インフルエンザウイルス検出試薬キットが体外診断医薬品として薬事承認された。

Oct.2010.10.25

次世代シークエンサーで、日本人の全ゲノム配列を初めて包括的に解析

日本人男性1人の全ゲノム配列の高精度な解析を達成した。約313万個の一塩基多様性を約99.9%の高精度で検出するなど、集団では見失われていた、遺伝子の機能に影響を与える一塩基多様性が個人個人には多いことを発見した。今後、このような方法で日本人固有の多様性を検出することによって、日本人のための病気の研究への展開が期待される。掲載雑誌:「Nature Genetics」(2010年10月24日)

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2011

Jan.2011.01.27
ある種のビフィズス菌(予防株ビフィズス菌)では、果糖から効率よく酢酸を産生し腸粘膜上皮を保護するため、O157による炎症や感染死を予防できると考えられる。

ビフィズス菌の作る酢酸がO157感染を抑止することを発見

ビフィズス菌が産生する酢酸が腸粘膜上皮の抵抗力を増強することで、マウスがO157による感染死を免れることを明らかにした。また、酢酸合成を亢進するビフィズス菌の遺伝子の同定にも成功した。掲載雑誌:「Nature」(2011年1月27日)

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Oct.2011.10.25
青色光の方向へ屈曲するシロイヌナズナの芽生えと、それを制御するオーキシン(IAA)

ついに植物ホルモン「オーキシン」生合成の主経路を解明

植物ホルモンのオーキシンは、植物の成長や形態形成において中心的な役割を果たしており、その生合成経路の解明は長年の重要課題であった。本研究において、植物の主要なオーキシンであるインドール-3-酢酸(IAA)は、モデル実験植物のシロイヌナズナにおいて、アミノ酸の一種であるトリプトファンからTAA1とYUCCAという2つの酵素によって主に合成されていることを明らかにした。最近、この経路から合成されるIAA量を調節することで、受粉しなくても結実できるナスやトマトなどが開発されており、今後も様々な農作物や樹木バイオマスの増産に繋がる可能性が期待される。掲載雑誌:「PNAS」(2011年10月24日)

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2012

Jan.2012.01.26
医療現場で使える迅速・簡便な遺伝子検出キットを開発した。

独自開発したRT-SmartAmp 法を適用し、新型インフルエンザウイルス検出に対して、迅速かつ高感度の検出が可能に

独自開発の遺伝子迅速検出法「RT-SmartAmp法」を適用して、従来のインフルエンザウイルス簡易検査キットに比べ約100倍という高感度で、かつ40分以内と短時間でウイルスを検出する方法を開発した。複数の医療機関・研究機関の協力により、臨床研究でその有効性を実証した。掲載雑誌:「PLoS ONE」(2012年1月25日)

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Mar.2012.03.26
日本人と欧米人における関節リウマチ発症に関わる遺伝因子

日本人の関節リウマチ発症に関わる9つの新規遺伝子領域を発見

約4万8000人という過去最大規模でのゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、日本人の関節リウマチに関わる9つの新規遺伝子領域を発見した。欧米人と比較し、新規と合わせて23の遺伝子領域が日本人の関節リウマチ発症に関わっており、欧米人とは15個が共通であることを解明した。掲載雑誌:「Nature Genetics」(2012年3月25日)

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Apr.2012.04.27
PD-1欠損マウスにおける腸内細菌の様子
PD-1欠損マウスでは、胚中心にあるヘルパーT細胞が増殖している(①)。
するとT細胞の補助が過剰になり、本来は抗体を産生しない不完全なB細胞も抗体をつくってしまい、抗原や善玉菌に結合する力が弱いIgAが腸管内に分泌される(②)。
その結果、善玉菌が粘液に付着してとどまれず排出される一方で、悪玉菌が増殖し腸内細菌のバランスが崩れ(③)、全身の免疫系が過剰に活性化される。

腸内細菌叢“悪玉菌”が自己免疫疾患発症させるという予想外の発見

自己免疫疾患は免疫系の異常で起こるというこれまでの定説を覆し、腸内細菌叢“悪玉菌”が自己免疫疾患を発症させるという予想外の発見をした。掲載雑誌:「Science」(2012年4月27日)

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Sep.2012.09.06
転写開始部位の転写量を測定できるCAGE法(図2段目)により、エンハンサーの予測領域の中心部から開始される双方向の発現が、エンハンサー領域の予測に使えることが示された。

独自技術CAGE法が国際プロジェクトENCODEに貢献

ヒトゲノムの全ての機能要素の解析を目指した国際プロジェクトENCODE計画により、ヒトゲノムの80%以上に機能があることを 証明した。理研が開発した独自技術「CAGE法」による転写開始点解析データがプロジェクト達成に重要な貢献をした。ENCODE計画には、世界5か国、32の研究機関が参加し、日本からは唯一理研OSCが参加。ENCODE計画の成果は、サイエンス誌が選ぶブレークスルーオブザイヤー2012に選ばれている。掲載雑誌:「Nature」(2012年9月6日)

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2013

Apr.2013.04.18
数十nM(ナノモーラー:1nM = 10億分の1M)という低濃度から白血病幹細胞を死滅させるRK-20449の薬効が表れ、濃度を高めるに従いその薬効が高くなった。

幹細胞を標的とした白血病治療薬プロジェクトにおいて、白血病再発の主原因「白血病幹細胞」を標的とした低分子化合物を同定

白血病幹細胞が発現する分子を狙った低分子化合物を創製し、その効果を白血病ヒト化マウスで確認。悪性な症例でも幹細胞レベルで白血病細胞を根絶できる、新しい治療薬の開発につながると期待される。 同プロジェクトの成果をもとに、理研ベンチャー「Flash Therapeutics,LLC 」(米国)を設立し、2016年8月に同社との間でライセンス契約を締結し、企業への導出を達成した。掲載雑誌:「Science Translational Medicine」(2013年4月17日)

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Jul.2013.07.11
免疫反応を抑制する働きのある制御性T細胞(Treg細胞)を誘導するヒトの腸内細菌として、17菌種の同定に世界で初めて成功した。

炎症性腸疾患やアレルギー症に関係する制御性T細胞を誘導するヒトの腸内細菌の同定と培養に成功

制御性T 細胞(Treg)の活性を増強するヒトの腸内細菌17菌種を同定した。この細菌をマウスに投与すると、大腸のTregの数が増加し腸炎や下痢が有意に抑制されることを示した。アレルギーや炎症性腸疾患などの過剰な免疫反応が原因となっている疾患は、過剰な免疫反応に対して、Tregによる抑制がうまく働かない(Tregの数が少ない)ことが発症要因と考えられ、この成果は、これらの病気の治療や予防への応用が期待できるもの。掲載雑誌:「Nature」(2013年7月10日)

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2014

Mar.2014.03.27
横軸はゲノム上の位置で、カウントされたCAGEタグ(ゲノム上の各位置から書き写されているRNA)の数を表示している。各行は細胞の種類ごとのカウントを示しており、細胞の種類によって活性化している領域が異なることが分かる。

理研が主導する国際コンソーシアム「FANTOM5」にて、大規模データベースを公開

理研CLSTが主導する国際コンソーシアム「FANTOM」の第5期プロジェクトとして、正常な細胞を含む各種細胞や組織を収集し、それらのゲノムに存在するゲノムDNAからRNAへの書き写しをコントロールする遺伝子配列を網羅的に解析し、これによりプロモーター(遺伝子近位制御部位)約18万5千個、エンハンサー(遺伝子遠位制御部位)約4万4千個の活性をさまざまな細胞で測定し、データベースを公表した。
多くの細胞の「正常細胞の定義」を得ることにより、病的な状態を定義し理解するための道を拓き、疾患と遺伝子制御の関連の解明に役立つがん研究や再生医療研究など様々な分野の発展に大いに寄与するもの。掲載雑誌:「Nature」(2014年3月27日)

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May2014.05.16
細胞のアナログ応答とデジタル応答

免疫応答の要となる分子の閾値(いきち)決定機構を解明

炎症や免疫応答の要となる転写因子「NF-kappaB(NF-κB)」の閾値を決定する分子機構を明らかにした。
免疫細胞の1つであるB細胞の情報伝達経路「CARMA1-TAK1- IKK」に注目し、この経路について詳細な分子動態の計測を行い、数理モデリングにより解析した結果、経路内に存在する細胞内情報を増幅する正のフィードバックが、B細胞受容体のアナログの分子情報をデジタル(0か1)活性に変換し、1細胞ごとにNF-κBのいき値を決定していることが分かった。掲載雑誌:「Science」(2014年5月15日号)

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2015

Feb.2015.02.13
細胞の変化の過程における遺伝子制御部位の活性パターン。最初にエンハンサー、次に転写因子のプロモーター、続いて転写因子以外のプロモーターの順に活性を示している。

細胞の表現型を決める転写制御の仕組みについて、遺伝子制御部位の活性ではエンハンサーがプロモーターに先行することを解明し、従来モデルを覆す発見

幹細胞の分化など細胞の性質が変わる過程で転写されるゲノム領域を網羅的に解析し、遺伝子から離れた位置で遺伝子の転写効率に関わる制御部位である「エンハンサー」の活性化が、一連の遺伝子発現の変化に先行して起きる現象であることを明らかにした。これは、エンハンサーとプロモーターの活性化は同時に起きるとされていた従来のモデルを覆す発見であり、iPS細胞の分化、がん細胞の成長因子への応答など、生命現象の根源的な理解に向けた手がかりとなる成果である。さらには、細胞の形質を自由に制御する技術への応用が期待される。掲載雑誌:「Science」オンライン版(2015年2月12日)

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Jul.2015.07.01
高温超電導内層コイルを用いて、物質・材料研究機構、日本電子(株)、ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー(株)と共同で、当時の世界最高磁場である1.02 GHz(24テスラ)を発生できるNMR装置を開発することに成功した。

世界最高磁場のNMR装置(1020MHz)の開発に成功

磁場1000MHzを超えるには高温超伝導技術が必須と考えられていたが、高温超伝導体が有する様々な課題のため、実現には至っていなかった。
構想から20年、複数の新技術を開発して世界最高磁場となる1020MHzを達成。また、膜タンパク質の2次元固体NMR計測を実施し、700MHzの従来型装置に比べ2倍程度の大きさのタンパク質計測が可能であることを実証した。
構造生物学、分析化学、材料工学などの諸分野に大きく貢献する世界的な一歩。さらにこの高温超伝導技術は、MRI、核融合、リニアモーターカー、超伝導送電線などへの応用が期待される。掲載雑誌:「Journal of Magnetic Resonance」(2015年5月15日)

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Oct.2015.10.20
2012年に報告した日本人のGWAS結果。ヨーロッパ、アフリカ、日本、ラテンの集団のメタ解析が行われ、11箇所の新規関連領域が同定された。

アトピー性皮膚炎の発症と関連する遺伝子領域を発見

理研も含む国際共同研究グループは、欧州、アフリカ、日本、ラテンの集団において約21,000人の症例と95,000人のコントロールサンプルを対象に、1,500万を超える遺伝マーカーを用いてアトピー性皮膚炎のゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析を行い、発症と関連する10の新しい遺伝子領域を発見した。その結果、既知の領域と合わせて、合計31のアトピー性皮膚炎の関連遺伝子領域を明らかにした。新しく同定された疾患関連領域には自然免疫応答やT細胞に関係する遺伝子が多く含まれており、アトピー性皮膚炎の病態では重要な皮膚バリア機構に加え、免疫応答の異常も重要であることが示唆された。掲載雑誌:「Nature Genetics」オンライン版(2015年10月19日)

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2016

Jul.2016.07.26
PGA1の発現を抑制したジャガイモは3か月の休眠後も20℃の暗所においても芽は出ず(右の2個)、遺伝子組換えを行っていないジャガイモは同じ条件で芽が出た(左の2個)

毒のないジャガイモと萌芽を制御できる可能性の発見

ジャガイモの緑化した塊茎の皮周辺と芽には、ソラニンなどのSGAと総称される有毒物質が高濃度に蓄積しており、食中毒の原因となっている。またジャガイモには収穫後数か月間、成長や発生が一時的に停止する「休眠期間」があり、その後に萌芽が始まるため、1年以上の長期保存ができない。したがって、萌芽の制御はジャガイモ加工業にとって大きな課題である。SGAが多く蓄積される芽や花で多く発現する遺伝子を解析した結果、遺伝子PGA1PGA2を発見した。PGA1もしくはPGA2の発現を抑制すると、収量は変わらず、SGA含量が低下し、さらに萌芽せずに保存することに成功した。今後、SGA含量を低く抑え、萌芽を制御できるジャガイモの育種が可能になると期待される。掲載雑誌:「Plant Physiology」オンライン版(2016年6月15日)

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2017

Jul.2017.07.05
aAVCは、自然免疫を活性化させる糖脂質と、標的とするがん細胞の獲得免疫を誘導する抗原を遺伝子操作によって搭載させたヒト他家細胞を培養することで作製される。CD1d を介してaAVCに付着した糖脂質がNKT細胞を活性化させるが、aAVC自体は体内で破壊されて樹状細胞に取り込まれる。この一連の反応によって体の中の樹状細胞の働きを最大限に強化され、ワクチンとして機能する。

人工アジュバントベクター細胞プロジェクトにおいて、理研初の医師主導治験の開始

先天的に備わった「自然免疫」と生後獲得する「獲得免疫」の両方を活性化する次世代のがんワクチンシステム「人工アジュバントベクター細胞(aAVC)」の臨床応用を目指した開発を進めてきた。非臨床試験により薬効や安全性を確認するとともに、 PMDAとの薬事戦略相談を経て、2017年7月から東京大学医科学研究所附属病院において、難治性急性骨髄性白血病患者を対象とした医師主導治験を開始した。

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Aug.2017.08.04
転写伸長因子(Elf1、Spt4/5)を結合したRNA ポリメラーゼII 転写伸長複合体の構造。Elf1とSpt4/5は、DNAやRNAの結合部位付近に結合し、DNAやRNAの通り道を確立する。

mRNAを合成する巨大な分子工場の姿を初めて可視化

クライオ電子顕微鏡解析等を駆使して、細胞内で転写を行っているRNAポリメラーゼII (Pol II)転写伸長複合体の立体構造を解明した。複数の転写伸長因子がPol II に結合し、DNAやRNAを導くトンネルを再構築することで、転写伸長に特化した機能的な複合体となることをはじめて捉えた。転写制御やクロマチン制御等、根源的な生命現象の理解への道を開くとともに、それらの制御の破綻による疾患を理解するうえでも重要な基盤を提供する成果である。掲載雑誌:「Science」オンライン版(2017年8月3日)

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2018

Mar.2018.03.12
NKT細胞標的がん治療の概要

NKT細胞を用いたがん治療プロジェクトにおいて、企業とのライセンス契約を締結、医師主導治験の開始

NKT細胞による免疫細胞活性化のメカニズムを応用し、新規に開発した再生医療等製品を用いたNKT細胞標的がん治療の研究開発を進めてきた。
2018年3月にアンビシオンへ独占的ライセンス契約を締結した。また、同治療の安全性・有効性を評価するために、 慶應義塾大学病院において、標準治療が無効、または標準治療が確立されていない進行・再発の固形がんの患者を対象とした医師主導治験を開始した。

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Mar.2018.03.28
iPS由来NKT細胞によるがん免疫療法の概要

iPS細胞由来NKT細胞プロジェクトにおいて、企業と導出条件のオプション付共同研究契約を締結、その後医師主導治験を開始

NKT細胞由来 iPS細胞から再分化誘導した NKT細胞を用いた新規他家がん免疫療法について、ブライトパスバイオ社との共同研究契約を締結し、企業移転の直前段階に到達した。その後2020年6月より、千葉大学病院において、頭頸部腫瘍等を標的とした医師主導治験を開始した。

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Jul.2018.07.26
微生物培養装置を用いたイソプレンの細胞内生産の様子

バイオマスからイソプレンを生成する世界初の新技術を開発

理研、横浜ゴム、日本ゼオンの共同研究により、バイオマスから効率的にイソプレンを生成できる世界初の新技術を開発した。世界初となる新しい人工代謝経路の構築と高活性酵素の作成により、優れたイソプレン生成能を持つ細胞の創製に成功した。イソプレンは合成ゴムの原料で、現在はナフサ熱分解の副生成物として工業的に生産されているが、石油依存や二酸化炭素排出という課題があった。本技術はジエンゴム原料にも適用可能である。

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2019

Jan.2019.01.24
同定・単離した 11 種類の腸内細菌株は、病原性微生物の排除や腫瘍免疫の中心を担う「CD8T細胞」を活性化する。

感染抵抗性や抗腫瘍効果を高める腸内細菌株を同定

健常者の便中から、CD8Tと呼ばれる免疫細胞を活性化する働きをもつ腸内細菌株11種を同定・単離することに成功した。さらにマウスを用いて、この菌株を摂取することにより、感染抵抗性や抗がん免疫応答が強まることを発見した。これは今後、感染症やがんの予防に対する新たなシーズとなる成果。掲載雑誌:「Nature」(2019年1月24日)

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Feb.2019.02.08
ヌクレオソームからDNAを引き剥がしつつ転写を進めるRNAポリメラーゼII(RNAPII)複合体の構造。転写伸長因子Elf1とSpt4/5は、RNAポリメラーゼIIとヌクレオソームの間に割り込み、ポリメラーゼがヌクレオソームの障壁を乗り越えてスムーズに通過するのを助ける。

真核生物のコンパクトに折り畳まれたDNAをスムーズに読み取って転写する仕組みを解明

細胞核の中でDNAはヒストンに巻きついてヌクレオソームという円盤状の構造をつくってコンパクトに収納されている。ヌクレオソーム構造をとったDNAからRNAポリメラーゼIIがいかにして遺伝情報を読み取るのかは生命科学上の長年の謎であった。クライオ電子顕微鏡を用い、ポリメラーゼがヒストンからDNAを徐々に引き剥がしつつヌクレオソーム上を通過する様子を捉えることに成功した。さらに、転写伸長因子がRNAポリメラーゼIIとヌクレオソームの間に割り込んで、ポリメラーゼがヌクレオソームの障壁を低減し、ポリメラーゼの通過を助けることを世界で初めて明らかにした。(複合体調製とデータ駆動型画像解析による先端的な構造解析がもたらした成果。)掲載雑誌:「Science」オンライン版(2019年2月7日)

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Apr.2019.04.15
早期卵巣がん患者の検査データを解析し、多次元尺度法(MDS)によって似た患者が近くなるように2次元で表すと、良性腫瘍に似たもの(クラスタ1)と進行がんに似たもの(クラスタ2)に分かれ[左図]、クラスタ1の患者は殆ど再発がなかったのに対し、クラスタ2の患者は再発・死亡率が高かった[右図]。

機械学習で卵巣腫瘍の特性を術前予測

手術や生検によらず、術前の情報のみから卵巣腫瘍の予後等の特性を予測し、治療戦略の策定に役立てる手法を開発した。
32種類の術前血液検査データから、教師あり機械学習を用いて、高い精度で卵巣腫瘍の良性・悪性が予測できた。さらに、教師なし機械学習によって予後と強く関連する早期卵巣がんの集団を発見した。手術前に治療方針を決めるのに役立つ情報が得られるとともに、卵巣腫瘍の性質を調べる基礎研究や創薬研究の進展に繋がる成果。掲載雑誌:「Clinical Cancer Research」(2019年4月12日)

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Sep.2019.09.02
aAVCは、自然免疫を活性化させる糖脂質と、標的とするがん細胞の獲得免疫を誘導する抗原を遺伝子操作によって搭載させたヒト他家細胞を培養することで作製される。CD1d を介してaAVCに付着した糖脂質がNKT細胞を活性化させるが、aAVC自体は体内で破壊されて樹状細胞に取り込まれる。この一連の反応によって体の中の樹状細胞の働きを最大限に強化され、ワクチンとして機能する。

人工アジュバントベクター細胞プロジェクトにおいて、アステラス製薬株式会社にライセンス許諾

アステラス製薬株式会社に対して、がん領域を対象疾患として、人工アジュバントベクター細胞作製のための基盤技術を利用した細胞製剤の研究開発、商業化に関し、全世界における独占的ライセンス契約を締結。また契約締結に伴う知財収入により、理研の知財収入実績に大きく貢献した。

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Nov.2019.11.13
スーパーセンチナリアンにおけるキラーT細胞の増加

110歳以上の超長寿者が持つ特殊なT細胞を発見

110歳に到達した超長寿者であるスーパーセンチナリアン7人と50~80歳の5人から直接採血を行い、血液中に流れる免疫細胞を1細胞レベルで解析した。その結果、スーパーセンチナリアンは通常は少量しか存在しないCD4陽性キラーT細胞を血中に多く持つことを発見した。免疫と老化・長寿との関係を理解することで、免疫の老化を予防し、健康寿命の延伸に貢献することが期待される。掲載雑誌:「PNAS」(2019年11月12日)

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2020

Jul.2020.07.03
神奈川県と企業で共同開発したSmartAmp法による新型コロナ迅速検出用簡易パッケージ

新型コロナウイルスの迅速検出法を開発

SmartAmp法を用いた、迅速・高感度・簡便な新型コロナウイルス感染症診断試薬・技術を開発した。迅速検査プロトコルを、神奈川県衛生研究所をはじめとする検査機関に導出し、市中検査現場に実装した。

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RIKEN Yokohama20th history

横浜キャンパス20年間の歩み
  • 横浜市での研究拠点整備を決定、覚書の締結
  • ゲノム科学総合研究センター(GSC)を開設
  • 横浜研究所が発足
  • 植物科学研究センター(PSC)、遺伝子多型研究センター(SRC)を開設
  • 西研究棟・南研究棟・西NMR棟竣工
  • 横浜研究所開所式
  • 免疫・アレルギー科学総合研究センター(RCAI)を開設
  • 交流棟竣工
  • 東研究棟竣工
  • 中央NMR棟竣工
  • 中央研究棟竣工
  • 北研究棟竣工
  • 特殊法人理化学研究所を解散し、独立行政法人理化学研究所を設立
  • 感染症研究ネットワーク支援センター(CRNID)を開設
  • ゲノム科学総合研究センターを改組し、オミックス基盤研究領域(OSC)、生命分子システム基盤研究領域(SSBC)、生命情報基盤研究部門(BASE)を開設
  • 遺伝子多型研究センターをゲノム医科学研究センター(CGM)に改称
  • 感染症研究ネットワーク支援センターを新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター(CRNID)に改称
  • 創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)を開設
  • 横浜研究所を改組し、横浜事業所が発足
  • 植物科学研究センターと基幹研究所の一部を統合し、環境資源科学研究センター(CSRS)を開設
  • ゲノム医科学研究センターと免疫・アレルギー科学総合研究センターを統合し、統合生命医科学研究センター(IMS)を開設
  • 分子イメージング科学研究センター、生命分子システム基盤研究領域、オミックス基盤研究領域を統合し、ライフサイエンス技術基盤研究センター(CLST)を開設
  • 予防医療・診断技術開発プログラム(PMI)を開設
  • 独立行政法人理化学研究所の名称を、国立研究開発法人理化学研究所に変更
  • 医科学イノベーションハブ推進プログラム(MIH)を開設
  • 「特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法」に基づき、特定国立研究開発法人に移行
  • 統合生命医科学研究センター、ライフサイエンス技術基盤研究センターを改組し、生命医科学研究センター(IMS)、生命機能科学研究センター(BDR)を開設
  • ライフサイエンス技術基盤研究センターの一部を放射光科学研究センター(RSC)へ統合

研究センター 略称説明

  • GSC

    ゲノム科学総合
    研究センター

  • PSC

    植物科学
    研究センター

  • SRC

    遺伝子多型
    研究センター

  • RCAI

    免疫・アレルギー科学
    総合研究センター

  • OSC

    オミックス基盤
    研究領域

  • CGM

    ゲノム医科学
    研究センター

  • PMI

    予防医療・診断技術
    開発プログラム

  • CLST

    ライフサイエンス
    技術基盤研究センター

  • DMP

    創薬・医療技術基盤
    プログラム

  • CSRS

    環境資源科学
    研究センター

  • IMS

    統合生命医科学
    研究センター

  • IMS

    生命医科学
    研究センター

  • BDR

    生命機能科学
    研究センター

  • MIH

    医科学イノベーション
    ハブ推進プログラム