昨年始まった新しい体験イベント。小学生以下の親子限定で、ホタルが光るしくみを使い、暗闇で光るスライムを作ります。各回定員10名、6回の開催。つくった「ホタルスライム」は、自宅に持ち帰って観察することができます。このホタルスライムづくりの実験を通じて参加者に知ってほしいことは何か、池田眞理子技師に聞きました。
このイベントは昨年の一般公開からスタートしたそうですが、どういう目的で企画されたのですか?
「ホタルスライム」が光る様子
新規イベントの企画を任され、タンパク質そのものにスポットライトを当てたいと思いました。さらに“子ども向けなら光ったほうが楽しいのでは”と考えたとき、高校の生物の授業で、ホタルの光るしくみを使ったキットで実験したことがあるのを思い出したのです。
世の中には、たくさんの種類のタンパク質があって、その中には「光る」働きをするタンパク質があります。まずは、その光る様子を目の前で楽しんでもらいたいです。
さらに、「光る」という目に見える現象から、光を発するために働いている目に見えない「タンパク質のかたち(構造)」まで想像してもらえるとうれしいです。
タンパク質の構造解析をされているということですが、ホタルスライムはその研究とどのように関連しているのでしょうか。
実は薬が効くしくみも、ホタルが光るしくみと似ています。私たちの体の細胞には受容体というタンパク質があります。ルシフェラーゼにルシフェリンがはまると発光を始めるように、この受容体にうまくはまるかたちの化合物があれば、お薬として働くことができます。ですからタンパク質のかたち(構造)を知ることはとても大切です。
タンパク質は種類によっていろいろなかたち(構造)をしており、そのかたちがタンパク質の性質や機能を表していることがあります。たとえば、細胞の中に水を通すためのタンパク質は筒状になっています。その一方で「これはなんでこんな形をしているんだろう」と、首をひねるような構造のタンパク質もありますが、そのかたちにも、きっと意味があるのだと思います。
私たちの仕事は、そのタンパク質がどんなかたち(構造)をしているのか目にみえるようにすることです。現在のチームの前は、様々なタンパク質のかたち(構造)を理解するために、世界中の研究者の人たちと協力してたくさんのタンパク質のかたち(構造)を明らかにしようという「タンパク3000プロジェクト」(*)に参加していました。この時に明らかになった多くの基本的なかたち(構造)をもとに、現在は様々な応用研究が進んでいます。
オリジナルキャラクターまであって楽しそうですね。イベントの一番の見どころを教えてください。
ホタルスライムづくりを体験する参加者
何といっても、「スライムになるところ」と「光るところ」ですね。去年はボランティアの高校生たちに手伝ってもらいましたが、終わってから「僕たちもやってみていいですか?」と、残った試薬で実験していました。子どもたちのようすを見て、自分たちもやりたくなったようです。こんなふうに「実験楽しい!」と感じてくれると嬉しいです。
子どもたちは白衣を着たとたんに、みんな凛々しくなって、解説アニメにも実験にも集中してくれました。親御さんも白衣を着たいという要望が出ましたので、今年は準備したいと思っています。子どもたちが実験している間、親御さんたちにも楽しんでもらえるように、ルシフェラーゼの研究の歴史やトリビア等をまとめたポスター展示も増やす予定です。
ホタルスライムは、お土産として持って帰ってもらえます。お家に帰ってからも、楽しめる方法もお伝えしています。ぜひ、たくさんの人に参加してもらい、光るタンパク質の世界を楽しんでもらいたいです。
*タンパク3000プロジェクト
http://www.tanpaku.org/about/old_project01.php
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