聞いてみよう!一般公開の舞台裏

施設公開・ツアー「植物の色々な色のヒミツ」環境資源科学研究センター生産機能研究グループ

1回につき小学生3~6年生限定で、90分間の実験&施設見学ツアーを3回実施。実験では薄層クロマトグラフィーを使って植物の色素を分離する過程を体験し、先端研究には欠かせない質量分析装置を見学します。そのねらいや見どころについて、企画を担当する木羽隆敏研究員と蜂谷卓士基礎科学特別研究員に聞きました。

小学生以下の親子限定で、少人数制の実験イベントですが、そのねらいはどこにあるのでしょうか?


研究で実際に使用される質量分析装置も見学できる

私自身も子供を持つ親として、子供たちに科学に興味を持ってほしいと、4年前から始めました。まだ難しい内容は理解できなくても、なるだけ小さいうちに自分の手を動かして実験し、“面白い”、“楽しい”と感じることが大事だと思います。保護者が同伴できるので、親子でもぜひ参加してほしいです。

多くの植物は緑色をしていますが、生えている環境や進化の度合いなど、いわばそれぞれの植物種の“生き様”によって、持っている色素が違います。白衣に着替え、身近にある植物の葉っぱをすりつぶして色素を分離することで、「緑って不思議だな」「何でこういうふうに色が分かれるのかな?」、あるいは実験のあとで質量分析装置を見学したときに「こんな最先端の機械を使っているのか」とか、何かしらの興味を持ってもらえるといいですね。 参加者の皆さんに実験の中で体験してもらう「分離(分ける)」と「定量(量をはかる)」はとても大切で、私たちの研究にも欠かすことができません。ですから、この実験を通して、私たちの研究についても説明していきたいです。

ということは、この実験は皆さんが日頃行っている研究の中身とも密接に関わっているのですね。

ええ、そのとおりです。私たちの研究室では、植物のもつホルモンのはたらきを研究しています。人間の体内でもたくさんのホルモンが働いていますが、植物にもホルモンが8種類あります。ホルモンとはたいへん少量でよく効く物質のことをいい、植物に含まれるホルモンは25mプール一杯分の水に目薬を一滴落としたくらいの割合で、ほんのわずかです。なかでも、サイトカイニンというホルモンは環境に応じて植物の成長を調整するはたらきがあり、その調整のメカニズムを解明しようと研究しているところです。

研究のためには、植物の中から特定の植物ホルモンだけを分離し、その植物ホルモンの量を正確にはかる必要があります。分離にはホルモンが特定の物質に「くっつきやすい」・「くっつきにくい」性質を利用します。ここまでは、私たちの研究もイベントの実験と基本的に同じです。ただし植物ホルモンはとても少ないので、測定には超高性能の機械が必要になります。その機械を実験のあとで見学してもらいます。

“本格的な実験は初体験”という方も多いと思いますが、どのような気配りをされていますか?


白衣を着て葉っぱを乳鉢ですりつぶす参加者

白衣を着て乳鉢で葉っぱをすりつぶすところから、なるだけ子供が自分の手でできるよう実験を組み立ててあります。研究員も普段は機械を使って分離していますので、自分たちで試してみて作業のコツをつかみ、きれいに分離する条件などを事前に検討します。その上で、2組の参加者に1人ずつ研究員がつきます。特にこのイベントは熟練したメンバーが揃っていますので、安心して参加してください。実験しながら「研究ってどういう仕事なの?」などの素朴な疑問にも対応します。また、これまでの反省を踏まえ、子供のいる研究員数名が企画を担当。子供達が自分から発見ができるよう、楽しい演出を考えているところです。

植物の色素、特にクロロフィルは光で劣化しやすく、ほぼ1日で色が消えてしまうので、分離の様子をスケッチする特製実験ノートを用意します。実験の結果を家に持ち帰り、科学への興味の入り口にしてもらえるとうれしいです。

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