聞いてみよう!一般公開の舞台裏

施設公開・ツアー「あなたはお酒に強い?弱い?アルコールパッチテストから遺伝子と体質の関係を見てみよう」統合生命医科学研究センター疾病多様性医科学研究部門

一般公開には毎回登場し、さまざまな年齢層の来場者が参加する人気イベント。各回(全3回開催)50人ずつの方にアルコールパッチテストを試していただきながら、アルコールに対する体質(強い・弱い)と遺伝子の関係をわかりやすく解説します。この体験イベントを通じて知ってほしいことを、福永航也特別研究員に聞きました。

アルコールに強いか弱いかは簡単にわかるのですか?遺伝子との関係についても教えてください。


アルコールを含ませたパッチをはがし、反応を確認する参加者

みなさんアルコールパッチテストの名前は聞いたことがあっても、実際に受ける機会はなかなかないと思います。アルコールを含ませたパッチを皮膚に貼っておくと、お酒に弱い人は赤く反応します。特に肌の白い人は反応がよくわかります。

人のDNAには約30億個の塩基配列があり、その中の2000個程度の塩基がアルコールを代謝する遺伝子の1つを作り出します。さらに、そのうちのたった1個が違うだけで、お酒に強い人、お酒に弱くてすぐ赤くなる人の違いが生まれます。親子でやってみても、必ずしも同じにはならないこともあります。ちょっとだけ種明かしをしますと、この“1個だけ違うためにアルコールに弱い体質である”という現象は、欧米人ではほぼみられず、日本人に多く見られます。アルコールパッチテストを体験することで、遺伝子の塩基配列の少しの違いから個人の体質の違いが生まれることを実感してもらえればと思います。

このイベントは日頃の研究とどのような関係にあるのですか。

私たちの研究センター(*1)は、DNAと個人の体質の違いの関係を調べるために、2003年から「バイオバンク・ジャパン」(*2)という大規模なプロジェクトの中核機関として参加し、約30万人のDNAを集めて研究しています。

私たちのグループは、遺伝子による個人の体質の違いの中でも、「薬が効く人・効かない人」や「薬によって副作用をおこす人・おこさない人」の違いはどこから生まれるのかを研究しています。薬を飲む前に副作用をおこす人・おこさない人を判定できれば、個人の体質にあった最適の薬を選ぶことができるいわゆる「オーダーメイド医療」をすることができます。
実は、パッチテストでわかるアルコールを代謝する遺伝子は薬の代謝にも関係があるというような研究成果も報告されています。ぜひこの機会に、私たちの研究についても知ってほしいですね。

パッチテストが体験できるだけでなく、解説も充実したものが期待できそうですね。


パッチテストをしながらレクチャーを聞く参加者

アルコール代謝に関する個人の体質の違いについての研究は日々進んでいますので、最新の情報を皆さんにお伝えできるよう準備しています。アルコールに強い・弱いが人種によって違うことはわかっていましたが、今では地域ごとなど、もっと小さな集団についての研究も進んでいます。たとえば、九州の人はお酒が強そうなイメージがありますよね。実際に遺伝子の違いはあるのか、知りたくありませんか? 

パッチテストをしながらレクチャーを聞いていただき、質問タイムも設けるので、どんどん質問してください。

昨年は女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査を行った後に乳房を切除したなど遺伝子検査がメディアで取り上げられることも多くなってきました。毎年イベントでの質問も多く、遺伝子と医療に関する皆さんの関心が高まっていることを実感しています。「自分たちの研究は社会に還元できている、これからもがんばろう」という気持ちになりますね。

*1 2003年当時は遺伝子多型研究センター、その後改組を経て、現在は統合生命医科学研究センター
*2 バイオバンク・ジャパンとオーダーメイド医療実現化プロジェクトについて http://biobankjp.org/leaflet/index.html

本イベントの開始時間・整理券などの情報はこちら > > 詳細

聞いてみよう!一般公開の裏舞台

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